オルガンレッスン 第1回目 | さいちゃんの教会音楽な日々

オルガンレッスン 第1回目

 空港での合唱の出番をこなした帰り、いよいよ久しぶりのオルガンレッスンである。曲はJ.S.バッハの「前奏曲とフーガハ長調BWV547」。本当は出番で疲れきった日にレッスンなんかぶつけたくはなかったのだが、そんなこと言ってたら時間が取れない。働いているというのはこういうことなんだなぁ(苦笑)
 で、フーガの方はまだ最後の3分の1しか出来ていないので、まず前奏曲の方を弾く。こちらはもう何回か礼拝やコンサートで弾いているから、一応それなりに自信はあったのだが、しかしモノはJ.S.バッハ。ちょっとした集中力の乱れとかで、あっという間に弾けなくなってしまう危険はいつもある。
 何とか最初から最後まで弾き終えたが、何だかガシャガシャした落ち着きのない演奏になってしまった。先生の第一声は、「ヴィルトゥオーゾに弾いたねぇ」。そこで、言われる前に「でも落ち着きのない演奏だったよねぇ」(注:実は先生とは前から仲良しで、duzen(敬語を使わない関係)なのである^^;)と言ってみたら、あっさり「うん、そう聴こえた」と言われてしまった(爆)
 で、先生の指摘は「それって、タッチの問題だと思うんだけど…?3つ組になっている8分音符の最後の音とか、16分音符の最後の2つとか…」 !!…というわけで、大作業のスタートである。最初の方のいくつかの箇所のアドヴァイスを受け、少しテンポを落として、出来る限り気をつけてもう一度弾いてみたら…


 本当だ…@_@;


 なーんと、演奏している自分の気持ちの方もちゃんと落ち着いたではないか。「そう、そう、それでいい。突然ものすごく音楽的な演奏になったよ!」と先生。
 落ち着きのない演奏になる理由を、うっかり精神論で片付けそうになっていた私にとって、これはものすごい

 新発見
かつ大発見

 であった。つまるところ、私の雑なタッチが原因というわけだ…(滝汗)
 更に先生曰く、「この曲って、僕にとってはヴィルトゥオーゾな曲じゃないんだよね~。なんていうかとっても女性的な、まーるい感じの曲で、尖ったところがない曲なんだよ。あんまり速いテンポだと、そうは弾けなくなっちゃうよね。」
 …それって致命的な指摘ぢゃないですか_ _; つまり私の演奏って、

 スピード違反の大暴走


 ってわけですな(爆) ←私が運転免許を持っていないのは神の恵みに違いない(自爆)

 フーガの方は進捗状況を説明し、最後の5声部分だけ弾いた。幸いにして、先生は私の悪戦苦闘ぶりに心から理解を示してくれた。「このフーガはね~!弾く度に一から作業しなおさなければならない曲の1つだよね。本当に難しいよ。」 続けて譜読みしなさいよ、というのと同時に、「でも16分音符のタッチをよく考えてね」というのを忘れなかったわが師匠であった^^;

 いやぁ…。これだからレッスンを受けるのは重要なのである。初回から思いっきり、的のど真ん中を射抜く指摘をされ、うわっ^^;と思うと同時に、はっきりわかったのは


 だからこの先生は、私が選んだ先生なのだ!


 …ということ。的のど真ん中を射抜く指摘は、誰にでも出来るものではないのだから…(^^)
 まだ手と足が一緒に動かなくてじたばたしていた初心者の私を、教会音大の入試レベルまで持っていってくれた先生である。それだけでもいい思い出たっぷりだったのだが、今後もたくさん学べることがありそうだ。

 ところで、レッスン後に「次にやるの、何の曲がお薦め?」と聞いてみた。先生には意外な質問だったらしく、目をぱちくりさせて「えっと、どんな時代(スタイル)のものが弾きたい?」と聞き返してきた。それで「可能なら何でも」と答えた後で、「例えば前に購入した楽譜で、こんなのがあるんだけど」と、用意していったデュプレの「コラールとフーガ op.57」の楽譜を取り出した。「前にコンサートで一度聴いて弾いてみたいと思ったんだけど、うちの教会のオルガンじゃ全然合うストップがないので、嫌になって途中で放り出しちゃったんだよね」と白状したら、「あー、それはわかる。やっぱり合う楽器で弾く機会がないと、やる気出ないよねぇ。」と共感しながら楽譜に目を通してくれて、「うん、僕はこの曲弾いたことないんだけど、持ってきていいよ。デュプレはテクニック的にはそんなに演奏困難ではないし、可能だと思う。」と言ってくれた。
 「あとは?」と聞いてみたら、先生もちょっと考え、おずおずと切り出したのが…


 「リストなんかどう?」


 リストキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!! いや、実はリストは先生の十八番なのである。
 「リスト」にはいわくつきの過去(?)があるのだ(先生が覚えているかどうかはわからないが)。私が教会音大の入試に受かった後、大学が始まるまで時間があったので、それまで先生にお願いして続けてレッスンしてもらったのだが、その時やる曲として強く薦められたのがリストの「B-A-C-Hの主題による前奏曲とフーガ」だったのである。
 げっ@_@; それは初心者に薦めるべき曲なのかい!!!と思った私は、へらへらごまかしながら(?)もう1つのお薦めだったフランクの「コラール第3番」に逃げ、弾かずに済んだと思っていた。が、その後大学で師事した教授が卒業試験用の選曲にあたって、「あなたにぴったりの曲がある。それはリストの『B-A-C-H』」と嬉しそうに提案してくれたおかげで、結局逃げるどころか卒業試験のメイン曲となってしまって今に至る_ _;
 というわけで、私のオルガン人生に背後霊のように付きまとう(ぇ?)リストなのであるが、再び出現である。そこで、先手を打って「B-A-C-Hは卒業試験で弾いたけど?」と先生に言ってみたら、「それじゃ、『Weinen, Klagen...』はどう?」だそうで…^^;
 来ると思った…!が、ある意味歓迎である。実は私、リストは「B-A-C-H」より「Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen」(「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」)の方が好きなのだ。「B-A-C-H」はリストの指の回転ぶりをひけらかした作品という感じで、おっそろしく派手でカッコイイけれど表面的なのだが、リストの人生のもっとも困難な時期を乗り越えて書かれた「Weinen, Klagen...」は、それとは音楽的な深さが全く違う。弾いてみたいと思って試したこともあるが、何せユニバーサル版で19ページもある大曲だ。あちこちかじってはみたのだが、根気がなくてそのままになっていた。先生にお尻を叩いてもらって、弾けるようにするチャンス到来である^^; ま、一朝一夕にはいかないけどねぇ。

 あと、「ペトル・エベンの作品が前から気に入っていて弾いてみたいと思ってるんだけど、初めて弾くのにいい曲はない?難しいっていうイメージがあるんだよね」というかなぁりマニアックな質問(^^;)をしてみた。ペトル・エベンは合唱曲やオルガン曲をたくさん書いているチェコの現代作曲家で、教会音楽界では有名な作曲家だ。先生がときどき弾いているのを知っていたので、的確なアドヴァイスが出来ると予想しての質問である。
 「エベンが難しいのは、むしろ最初だけだと僕は思う。右手と左手が別の調で書かれているから、手が慣れてなくて、書いてあるのと違う風に弾きたがるから難しいんだよ。でも、慣れてしまえば逆に大丈夫。」と説明してくれた上で、「聖書による4つの舞曲」と「日曜日の音楽」を薦めてくれた。楽譜を入手せねば。

 初回から収穫たっぷりのレッスンで、満足して帰路についた私だった。もっとも、やることはいきなり山積みになったけどねぇ(滝汗) 一気にやろうとしても無理なので、少しずつ、でも着実に学びたいと思う。