新しい礼拝の本 | さいちゃんの教会音楽な日々

新しい礼拝の本

 今朝は私が働いている教区の教会音楽家会議があり、出席した。毎度のことながら教区で行なわれていることの情報交換を中心に話が進められたのだが、今回の一番重要なテーマは「新しい礼拝の本について」である。
 今年6月、ヴュルテンベルク州教会は独自の新しい"Gottesdienst-buch"、直訳すると「礼拝の本」を出版して、各教会に配布した。掲載されている内容は礼拝に関する考え方、礼拝順序、祈りの例など。実は、ドイツ全土での「礼拝の本」は2000年にすでに出版されているのだが、他の地域と違ってスイス改革派の影響の強いヴュルテンベルク州教会はこの「礼拝の本」にドイツで唯一賛同しなかった。(注:他の地域は圧倒的にルター派の影響が強い。)そこで、ヴュルテンベルクが独自の本を出版することになったわけである。だからといって、ヴュルテンベルクが自分達のやり方だけを押し通そうとしていないことは確かで、新しい「礼拝の本」にはドイツの他の州教会が日常的に行なわれているルター派のドイツ・ミサ形式の礼拝順序も載っており、他の地域の礼拝順序を少しずつ取り入れる方向で考えていることは確かだと思う。

 これをしかし、今までずっと違う風に礼拝をやってきた個々の教会がどう受け止めているのか、またそれに関して教会音楽家との間で話がなされたかどうか、今日の会議で情報交換をしたのだが、教会によって反応が様々だということがわかった。ある教会の合唱団の指揮者は、自分はカトリックなのでドイツ・ミサ形式が「カトリック過ぎる」という批判を受けるのではないかと心配していて(注:ドイツ・ミサ形式の原型はカトリックのミサ形式なのでかなり似ている)、切り出すのをためらっているという。ある教会には複数の牧師がいて、牧師によって全く意見が違うのでどう取り入れていいものか悩んでいるという。ある教会は教会音楽家が専門教育を受けていないアマチュアなので、全く発言権がないという。そして、ある教会では教会員の中に古い形式を守るのに固執する人が2~3名いて、その2~3名のせいで話し合いが進まないという。95%の会員にとってはどっちでもいいことなのにね、と苦笑したのだが、変化を阻むその辺の構図は日本・ドイツを問わずどこの教会でも同じだなと思わざるを得ない。
 ちなみに私がオルガニストをしているホイマーデンの教会ではこの本についてどうするかという話は一切出ていないので、先日私が教会役員とちょっと話をして役員会にかけるようつついたところである。そして、私が合唱指揮者をしているメーリンゲンの教会は、牧師自身が教区の教会音楽担当であることもあってとても積極的で、私が初めて指揮をする12月の第一日曜日から、この新しい本の礼拝順序を正式に導入すると宣言している。私自身、教会音楽をバーデン州教会で勉強したこともあり、ドイツ・ミサ形式には慣れていて流れもよく知っており、私が指揮をするときに新しい本の導入礼拝がドイツ・ミサ形式で行なわれることを嬉しく思っているし、礼拝が上手く流れるように音楽をもって最大限の協力をするつもりでいる。

 ドイツ・ミサ形式は実際、改革派の礼拝順序よりもはるかに音楽を効果的に用いる可能性がたくさんある礼拝順序なので、この形式のヴュルテンベルクでの導入は教会音楽家にとっては喜ばしいことなのだ。これからこの形式がどのように取り入れられ、浸透していくのか興味深いなと思いながら、他教会の話を聞かせてもらった。次の会議でどんな報告がなされることになるのか、楽しみである。